江古田鐵道 DCC&HOのブログ

DCCとHOゲージのブログです 車両は旧国鉄中心です

CV値の考察(3)動力性能・走行性能(1) CV#29 Bit 4 ”Speed Table”、CV#2、CV#5、CV#6、CV#25、CV#66~CV#95

多くのマニュアルでは、CV値についてCV#1から順番に説明しています。しかし、ユーザーから見るとどの機能を使うか、どの機能を変更するか、が重要でそのためにどのCVを変更する必要があるか、を知りたいはずです。そこで、このブログでは機能別に調べた結果を記載します。機能別に説明してある例を記します

 

Lenzは、5. Features of the decoder で最初に記載しているのは、5.1 Capacity and protection equipmentです。DCCの老舗としての考えだと思いますが、ショートや過負荷が発生した際その原因をCV#30(Error Information)に自動的に書き込む、というものです。他のマニュアルでCV#30の説明、ましてCV説明の最初に記載してあるのは見たことがありません。その後は5.2 Motor control  5.3 Running notches という具合に機能別にどのCVをどのように設定すればよいか、が記載されています。もちろん、7 Table of supported CVs でCVの一覧が表示されています。なお、Lenzでは “Default” ではなく “Ex-works setting” が使われています。” Ex-works setting” は「工場出荷時設定値」とでも訳すのでしょうから、“Default” と同義だと思います。

Digitraxは5.0 Decoder ProgrammingでCVの読み取り、書き込み方法を解説した後、6.0 CVs-Configuration Variables でCV#1、CV#29等の基本的な機能を説明し、Table III: CVs used in Digitrax Decoders一覧が表示されています。

また、”Visit our online CV Calculator at www.digitrax.com/support/cv/ for help with determining the best CV Value to program into a CV” とヘルプサイトを記しています。その後、8.0 LocoMotion CVs で動力性能・走行性能関係のCVについて解説し、9.0 Function CVs で灯火関係、特にDigitrax特有のFX3

(正確には3はXの右上)の解説が詳しくされています。10.0 Decoder Utility CVs、11.0 Digitrax SoundFX Systemの説明があります。

LokSound5は私が見た限りでは最も詳細にDCC全体について記載されています。Lenz、LokSound5のメーカであるESUはともにドイツの会社です。説明の内容は詳細にわたっており、初心者向けには少々理解が困難な内容もあります。LokSound5では 8. Decoder Settings (Programming) でCVについて説明があり、欧州各社のDCCシステムでProgrammingをどのように行うか、システム毎に記載されています。次に 9. Address settings でアドレスの設定について記載されています。そして 10. Adapting the Driving Characteristics、 11. Motor Control、12. Function outputs、13. Adjusting the Sound Effects、14. Random functions、15. Decoder Reset、16. Special Functions と続きます。8.から16.までで46ページも費やしています。最後に 21. LokSound CV table CV#1からCV#255までList of all supported CVs としてCVの一覧表が掲載されています。

 

話がそれました。

DCCの機能としては、まず車両が動くことだとおもいますので、動力性能・走行性能から入ります。

DCCによる運転では、おそらくアナログDCを運転していた人がDCC化して運転するのが殆どと考えられます。したがって、アナログDCと同様の感覚で運転できる様にDefault値が設定されているように思えます。

前回CV#29 Bit 1 で説明したSpeed Step は各社Command StationがDefaultで128Stepになっているようですので実質的に全て128StepがDefaultになっていると考えています。以下断らない限り128Stepを前提に記載します。

電気機関車や電車の実機はノッチとブレーキで速度を調整しています。一方、模型では基本的にブレーキに相当するものはありません。またノッチに代わるものとして無段階で速度を調整できるコントローラが使われています。ブレーキが無い理由は、物理的なブレーキを模型で実現することが困難なことと、車両重量に比しモーターのトルクが大きいため、減速もスロットルを調整すればすぐにスロットル位置に対応する速度になるためです。ステップはノッチに相当するもので、デジタルですから基本は非連続ですからノッチの考え方と類似した設定が可能です。14Stepは実機に近いステップ数ではないかと思っています。一方128StepはアナログDCのコントローラの無段階に近い扱いになります。そのため128StepがDefaultになっているのではないかと思っています。なお、実機でも蒸気機関車や液体変速式のディーゼル車両は車のアクセル同様連続的なスピードコントロールになっています。

ここから本題のスピードテーブルの話に入ります。

まず前回説明したCV#29のBit 4の取り扱いです。

前述したように、各社のDefault値は “0” になっています。QSI以外は、NMRAの規定通り "0" = speed table set by configuration variables #2,#5, and #6 と書かれているとおり、CV#2、CV#5及びCV#6規定される ”Speed Table” を使用しています。

簡単に言うとCV#2(Vstartはスタート電圧(Digitrax日本語版)等と記載されていますが、車両に印加される最低電圧、CV#5(Vhigh) は(Digitrax日本語版)等と記載され車両に印加される最大電圧、CV#6(Vmidは中間点電圧(Digitrax日本語版)等と記載され、128ステップの中間点64ステップで車両に印加される電圧を規定しています。Default値はCV#2=”0” 、CV#5=”0” 又はCV#5=”225” 、CV#6=”0” としている例が殆どです。CV#5、CV#6の”0” は少し特殊な意味を持っています。CV#5、CV#6について、NMRAでは”0”又は”1”は特別な意味を持ち”Vhigh (Vmid) is not used in the calculation of the speed table”と書かれています。この意味は、Speed Tableにおいて、Step0からStep128まで青線で示しているように直線で表される、即ち通常のアナログDCのスロットルと同様の動きをします。

 

 

一方、CV#2,CV#5、CV#6 を設定することにより赤線のようなスピードテーブルも作れます。図の例では CV#2=25CV#5=204CV#6=76 に設定した場合のスピードテーブルを示しています。何故このようなスピードテーブルが必要になるのでしょうか?最高速度が異なる車両を運転する場合、例えば最高運転速度100Km/hのC62と最高運転速度65Km/hの9600を同時に運転する場合、Decoderの設定が共にLinear(青線)としていれば、両車両とも同じように動き最高速度も同じになります。明らかに実機と異なる速度になります。このような場合9600のCV#5 を設定することにより最高速度で走行しても速度が異なるようになります。C62と9600の最高速度差を実現するためには65/100×255=165.75 CV値は原則整数ですので、即ち9600のCV#5=166に設定すれば良いことになります。国鉄時代、JR時代を通して、狭軌の最高運転速度は130Km/hですから、各車両の最高運転速度に合わせたCV#5 を設定すれば、実機に比例した最高速度が実現出来ます。

 

前述したようにQSI社はCV#29 Bit 4Speed Table” を “0” (Default値)に設定した場合NMRA標準とは異なる表現になっています。

3.17 CV 29 Configuration Data (P67)

Bit 4 = Speed Table set by configuration variables.

“0” Speed Table not used.

“1” Speed Table set by CV 25, Quantum Speed Table selection.

When bit 4 of CV 29 is set to “0” a linear Speed Table is used by default.

しかし、CV#2,CV#5、CV#6の説明を読むと、他社同様 Bit 4=”0”の場合CV#2,CV#5、CV#6 の設定によるようです。

各社のCV#2、CV#5、CV#6のDefault(初期値)は次の通りです。

 

   

各社のDefault(初期値)

 

CV#

Name

Lenz

Digitrax

ESU

QSI

Soundtraxx

2

Vstart

            1

                   0

          3

       32

                  7

5

Vhigh

        254

                   0

      255

        1

          ー

6

Vmid

          48

                   0

       ー

        0

          ー

              注:”-”はManualに記載がありません

 

この表から読み取れる各社のDefaultの考えは次の通りと考察されます。

Lenz社はCV#6(Vmid)の値が48とCV#5(Vhigh)の20%弱に設定されています。スロットルを半分まで回す間はスロットルに対する反応が小さく、半分以降はスロットルに対する反応が大きくなっています。Speed Tableの赤線部分の傾きが前半はより緩やかで、後半はより急峻になります。Lenz社が何故このようなDefaultにしているか理由はわかりかねます。

QSI社はCV#2(Vstart)が32と他社に比較し大きな数字になっていますが、実感としては他社とほぼ同様です。なお、QSI社はWhen bit 4 of CV 29 is set to “0” a linear Speed Table is used by default. と記載しておりLinearであるとしています。

Digitrax社は6.13.1 Simple 3 Step Speed Tables with V-max, V-mid & V-start で機関車の種類に応じた標準的な数値が示されています。

入換機関車(Switcher)は「低速のスピードコントロール中心で制限された最高速度」と記載され設定例としてCV#2=26, CV#6=38, CV#5=64 が示されています。本線機関車(Mainline Loco)は「常用速度まで早い増加、その後最高速度まで緩やかな増加」と記載され設定例として CV#2=26, CV#6=128, CV#5=154 が示されています。その中間として CV#2=26, CV#6=48, CV#5=98 が示されています。

ESU社、Soundtraxx社はほぼアナログDCと同様の反応になり、アナログDCから移行する方には違和感が無いようにしていると思われます。

 

CV#29、Bitb4=”1” に設定した場合NMRAの規定では、"1" = Speed Table set by configuration variables #66-#95 と規定されています。

つまり、CV#66に最低電圧(例えば0や1)がCV#95に最高電圧(例えば225)を規定し、その間のCV#には少ない方から順番に電圧値を入れます。通常はそこまで細かにステップを規定する必要性はないと考えられCV#29、Bitb4=”0” で最低電圧、中間電圧、最高電圧を規定すれば十分と考えられるため、DefaultでCV#29、Bitb4=”0” になっていると考察できます。

CV#66~CV#95 はDefaultで全て規定していないか、何らかの数値を設定しているものもあります。

なおDigitrax社は6.13.2 High Resolution 28 Step Speed Tables CV65-95 との項目があり、元々28ステップモードを前提にしたスピードテーブルと読めます。

また、QSI社だけは、“1” Speed Table set by CV 25, Quantum Speed Table selection. と規定しており、3.16 CV 25 Quantum Speed Table Selection でLinearを含む11種類の曲線が規定されており、その中から選ぶ方法がとられています。NMRAでもCV#25は”Speed Table/Mid Range Cab Speed Step” と規定されていますが、QSI社以外は、CV#25についての記載はありません。

 

いずれにせよ、通常はCV#29、Bitb4=”0” で十分だと考えられます。